「雪」 粉のような雪が、 頬に舞い降りて消えた。 思わず空を見上げた。 真っ暗い夜の中、 街灯に照らされて、 真っ白く光る雪。 ふてくされてポケットに突っ込んだままだった手を 空に伸ばしてみた。 雪はしんしんと降っていた。 粉雪というものがあるなら、 きっとこれなのだと思った。
道路が白く染まる。 街灯が無くても綺麗に光るそれは、 さくさく音を立てて、 歩いたあとをかたどっていく。 さくさくした音は さくさくと心に響く。 生きている心地がした。
夜が明けた。 雪は太陽に照らされ、凍っていた。 あんなにさくさくしていた雪は、 頑として溶けない氷になった。 手に触れただけじゃ消えない。 歩いたあとをかたどることもない。 まるで僕の心みたいだ。
透明になっても、 凍てついた雪が、 まるで閉じこもりたがっている自分みたいで、 憎らしかった。 でも同時に、 ひとかけらくらい持っていたかった。 自分の証のように誇らしく。
きょうもまた、 僕は歩く。 雪のように優しく、 雪のように頑なに、 ”いま”を歩く。
|